主から執事へ

「僕を抱け」

 驚いている瑠偉斗の表情が、雨の打ちつける窓に映る。
 外では、雷を伴った大雨が今日も降り続けている。

「これは命令だ」

 こう言えば、瑠偉斗が断れないとわかっていて言っているのだから、僕は卑怯だ。
 でも、こうでもしないと僕はお前に償うことが出来ない。

 お前から、僕の双子の妹・茉莉亜まりあを奪ってしまった罪は決して消えることはないだろう。
 僕がお前達の仲を反対さえしなければ、お前は茉莉亜を失うことはなかったし、
 茉莉亜だって死ぬことはなかったはずだ。

 僕がお前達の幸せを壊してしまった。
 だから、お前が茉莉亜を忘れるまで……
 いつかこの屋敷を後にするまで……
 僕は茉莉亜の代わりになろう。

 だから、どんなにお前の声が優しくても
 どんなに抱き締めてくる腕が温かくても
 勘違いをしてはいけない。
 僕達の間に愛はないのだから。

―――――……。

 瑠偉斗に手を引かれてベッドへと向かう僕の後ろで、眩しい光とともに雷が大きな音をたてて鳴った……。