乙女な女王様

乙女な女王様

女王様と初下校・3

「昨日……八神と瀬戸がなんだか羨ましかった。あの二人はお互いに色々知ってて、冗談も言い合える友達なんだなって。俺はお前と、そんな関係になれなかったから……」完璧で、誰もが憧れる優弥がこんなにも一人で悩んでいたなんて千歳は知らなかった。それもそのはずだ。
乙女な女王様

女王様と初下校・2

(どうやって話を切り出そうか?)千歳は歩きながら、本題を話すタイミングを考えていた。他愛もない会話から……と思っても、その他愛もない会話すら思いつかない。ゆっくり話すには、どこかで落ち着いた方がいいが、お店などに入ってしまうと周りが気になって話どころじゃないだろう。
乙女な女王様

女王様と初下校・1

次の日の朝、和彦の予想通り、優弥は朝会で生徒会長として壇上に立っていた。いつも通りに気丈に振る舞っている優弥のようだが、その手首には亮太のリストバンドがついているし、どこか元気がないようにも思える。やっぱり、昨日のことを僅かながら、気にしているのだろう。
乙女な女王様

女王様を救出・4

「俺、相馬に……キスされた。もう、汚れてるから、高瀬は触らなっ……」泣いてそう告げる優弥の言葉を塞ぐために、千歳はあえて優弥の唇へとキスをした。すぐに離すと、優弥の驚いたような目と視線が合う。「なんで……」「だって優弥はどこも汚れてなんかないだろ?」
乙女な女王様

女王様を救出・3

ドォォン!今までで一番大きな音をたてて、扉が生徒会室内へと倒れていく。勢いでドアと一緒に中へと倒れそうになった千歳達を、和彦が支えてくれた。「優弥、大丈夫か!」倒れたドアを踏み越えて、千歳が室内へと入ると机の上に押し倒されている優弥の姿が目に入ってきた。
乙女な女王様

女王様を救出・2

「なぁ……和彦」「何だ?」生徒会室へと走りながら、千歳は和彦に声をかけた。「さっきお前が言ってた『女王様の噂』って……嘘なのか?」千歳は複雑な想いで、和彦にそう聞いた。あの噂が嘘だとしたら、嬉しい気持ちが少しと……。
乙女な女王様

女王様を救出・1

「千歳! ヤバいぞ」帰り支度を終えたばかりの千歳に、和彦は教室に戻ってくるなりそう叫んだ。和彦がここまで慌てるなんて珍しいと、千歳は僅かながらに驚く。「何がヤバいんだよ。亮太は? 一緒じゃなかった……」千歳の言葉を遮って、和彦が怒鳴った。
乙女な女王様

女王様、傷心・3 ※

「ふーん……なら、仕方ないか。じゃあ、唇以外にね」そう言って、相馬は優弥の頬や首筋へと唇を寄せてきた。(別にキスが嫌いなわけじゃないけど……)千歳には数え切れないくらいキスさせていたし、自分から仕掛けていったことだってある。でも、なんとなく相馬とはキスをしたくなかったのだ。
乙女な女王様

女王様、傷心・2

「……なんでミルクティーなんだ?」答えの代わりに、そんな質問が優弥の口から零れた。それに対して相馬は笑顔で言う。「いつも会長、ミルクティー飲んでたから。これなら飲んでくれるかなって」(こいつ……そんなに俺のこと、見てたのか)
乙女な女王様

女王様、傷心 ~優弥サイド~

「お前……最低っ!」そう言うと、優弥は保健室を飛び出した。後ろで千歳が何かを言っていたが、今は何も聞きたくない。「はぁっ、はぁっ」優弥は振り返りもせずに全力で校内を走って、生徒会室へと向かった。 途中で他の生徒に会わなかったのは、運が良かったといえるかもしれない。