女王様との思い出・2 ※

「遅い」

 千歳の姿を見つけるなり、優弥はそう言って怒った。

「悪い、クラスのやつにつかまって……」

 保健室の鍵を内側からかけて、千歳は優弥へと近づく。

「なんか前にも、その言い訳してなかったか?」
「うわっ!」

 近づくなり、優弥に腕をひかれて千歳はベッドへと強引に座らされた。
 そして、千歳の足を跨ぐ形で優弥が上に乗り上げてくる。

「クラスのやつより、俺を優先しろ」

 そう言うと、優弥はまるで噛みつくかのような激しいキスを仕掛けてくる。
 優弥と話したいことはたくさんあるが、とりあえず奉仕する千歳側としては、このまま優弥に主導権を渡すわけにはいかない。

「……んっ、ふぅ……」

 お返しをするかのように、千歳が優弥の舌を絡め取ると、優弥から鼻にかかった吐息が漏れる。
 やり返されたのが悔しいのか、優弥は意地になって舌を使ってくる。

(……可愛い)

 キスを夢中で仕掛けてくる優弥本人は気づいていないだろうが、密着している制服のズボン越しに、すでに優弥自身の硬度が増してきていることに千歳は気づく。
 男冥利につきると言ってしまえばそれまでだが、千歳はちょっと心配していた。

(……最近、俺を呼び出す回数が増えてるよな)

 そのため、頻繁に授業を休むようになった千歳を、和彦が心配するのも無理はない。
 優弥にしたってそんなに自習があるわけではないから、サボリが増えているはずだ。
 でも、それ以上に千歳が心配なのは優弥の身体への負担だった。
 自分とだけでも二、三日に一回ペースでヤッていて、まさか他の取り巻き達を放っておくわけがないから、自分と会っていない時は他の奴の相手をしているということだろう。
 終わるといつも、優弥は憔悴しきった様子で、最中に気を失うことも珍しいことではなかった。

(……やっぱり負担かけてるのか)

 千歳がそんな心配をしていると、いきなり顔を両手で優弥につかまれた。
 そして、唇を離した優弥に睨まれる。

「何、余計なこと考えてる……俺だけに……集中しろ!」
(ずるいなぁ……こんな言われ方したら応えないわけにいかないでしょ、下僕としては)

 優弥の要望に応えるべく、千歳は優しくその舌に噛みつくと、両手を優弥のシャツの下から入れて脇腹を撫でる。

「んっ、んん……」

 くすぐったかったのか優弥が身じろいだ。
 そして、初めてキスから逃げようとしたので、千歳は逆に逃がさないように捕まえる。

「ふぁ……んっ……」

 チュッと音をたてて、優弥の唇を解放すると、優弥は千歳の肩に頭を乗せて軽い酸欠状態になっていた。
 優弥の呼吸が少し落ち着くのを待っている間に千歳は眼鏡を外して、枕の横へと置く。
 それから、優弥のおでこにキスをして、右手を優弥のズボンの前へと移動させる。

「んっ……」

 優弥の身体が、ビクッと反応する。
 それを気にせず、千歳は片手で優弥の前を寛げ直に自身へと触れた。
 途端に優弥の身体が大きく跳ねる。

「あっ、高瀬ぇ……」

 力の入れ具合を調整しながら握ると、その先端から透明な雫があふれ出す。

「気持ちいい?」

 わざと、くちゅっと音をたてて愛撫し、優弥の耳元でそう囁くと、優弥がギュッと千歳の首に抱きついてきた。

「……っ、あ、はぁ……んっ……」

 優弥の口からは意味のない言葉しか出てこない。

「あれ? まだこれじゃ足りない?」

 そう言うと、千歳は優弥のワイシャツの前を開き、その胸の突起に舌を這わせた。
 当然、優弥自身には指を絡めたままだ。

「あっ……あぅっ!……ん、だめっ……」
「ダメ? じゃあ、やめちゃう?」

 すでに泣き声になってる優弥に意地悪く千歳が言うと、優弥は首を横に振る。

「やぁ……高瀬の……意地悪!」

 いじめ過ぎると、優弥は女王様らしくなくなる時がある。
 それが可愛くて、ついやりすぎてしまうのだが……。

(今の深海なら少しは我が儘聞いてくれるかも)

 千歳は優弥の右手首を掴むと、そのまま優弥自身を愛撫している自分の右手へと導く。

「深海、ここ自分でしてみて」
「え……?」

 意味が理解出来ずにいる優弥の耳に口を寄せ、千歳はいつもよりも声のトーンを落として囁く。

「俺のと一緒に」
「っ!」

 途端に、優弥の顔が赤く染まった。

「ね? お願い」

 すると、優弥は躊躇いがちに千歳のズボンへと手を伸ばした。
 そして、緊張しているような手つきで前を寛げ、中から千歳自身を取り出す。