見守る者

 決して、交わることの許されない、主と執事の想い ――。

 そんな二人を屋敷の外から人知れず見守る存在・茉莉亜。
 彼女は奨悟の双子の妹であり、かつて瑠偉斗の恋人でもあった少女である。
 だが、二年前に命を落とした彼女はすでにこの世には存在しない。

 そんな人ならぬ茉莉亜の存在を感じ取れる者は、今の成宮家には誰もいなかった。
 それでも茉莉亜は伝え続ける。

 大切な人達に、自分の想いが必ず伝わると―――。

 
 そう信じて茉莉亜は、雷雨と共に今日もここを訪れる。