女王様の初恋 ・2 ※

 下は脱がないのか……と一瞬思ったが、千歳に堂々と全裸になられても、それはそれで恥ずかしいと気づき、優弥は黙っていた。
 そして、千歳の両足を跨ぐように向かい合わせに座り、その背中に腕を回して胸に抱きつくと、千歳も抱き締め返してくれた。

「どうした? 自分から甘えてくるなんて、珍しいじゃん」
「たまにはな。嫌なのか?」
「まさか。大歓迎!」

 千歳の笑顔に安心した優弥は、そのまま千歳の唇にキスをした。

「んっ……ふ……」

 角度を変えて何度も深く合わせる。

「……高瀬……もう」

 吐息とともに優弥が呟くと、千歳の指が優弥自身に絡められた。

「あっ、違……くて……」
「違うって……」

 千歳の手を優弥が押さえて止めると、千歳はちょっと驚いた様子で優弥の顔を覗き込んできた。

「いいの? 深海」

 優弥の言いたいことがわかったのか、千歳が確認してくる。
 その問いに優弥は無言で頷いた。

「じゃあ、ちょっと腰上げてて」

 言われた通り、優弥は千歳の両肩に手を置く姿勢で腰をあげた。
 千歳は枕の横に置いてあったクリームを手にすると、それを指につけた。

「最初、冷たいかもしれないぞ」

 そう言うと千歳はその指をそっと優弥の後ろへと入れてくる。

「……くっ……ん」

 冷たさとそこを開かれていく違和感に自然と声が詰まり、千歳の肩に置いている指にも力が入ってしまう。
 やっぱり最初に入れられる感覚は、いつまでたっても優弥は慣れることが出来ない。
 すると、優弥の気を紛らすように千歳が優弥の胸を舐めてきた。

「あっ、んんっ!」

 左右の突起を交互に舐めたり吸ったりされ、時おり軽く噛まれたりする。

「んぅっ……あ、ああ」

 それは、後ろの違和感を忘れるくらい濃い愛撫だった。
 胸へと優弥の意識がいっているうちに、千歳は十分に後ろを解したようだ。
 気がつくと、千歳の指が抜かれたそこは奥から疼いてくる。

「あっ、高瀬……もう、膝、立ってられ……ない」

 意識しないと座り込みそうな身体を、千歳に抱きつくことで優弥は必死に支える。
 それなのに……。

「んぁ……お前、いい加減に……しろよ。そこ、ばっかり」

 優弥が抱きついたことで、さらに密着した胸を千歳はしつこいくらいに舐め続けていた。

(感じすぎて身体が辛い。早く、激しいくらいの刺激が欲しい……)
「あっ、もう、やだぁ」

 優弥の瞳から涙が一筋、零れ落ちる。

「深海……『お願い』って言ってみて」

 涙の跡にキスをしながら、千歳がそんなことを言う。
 本当なら、ふざけるなと言い返したい気分だが、その千歳からの要求を拒む余裕は、今の優弥にはない。

「あ……お願い、高瀬。早く、入れ……」

 優弥が最後まで言い終わらないうちに、いきなり千歳に腰を強く掴まれた。

「あぁ、んっ!」

 いつの間にかゴムを付けて準備を済ませていた千歳自身が優弥の奥まで入ってくる。
 待ち望んだ質量に満たされた優弥は、完全に千歳の上に体重をおろし抱きつくことしか出来ない。

「ん、あぁ……高、瀬」
「ほんと、ヤッてる時の深海は……素直で可愛いな」

 呼吸を僅かに乱した千歳がそんなことを言ってくる。

「普段は……んっ……違う、のかよ」

 別に可愛いと言われて喜ぶ趣味はないけれど、優弥は言葉を詰まらせながら言い返す。
 すると、千歳は小さく笑いながら答えた。

「普段の深海は甘えてくれないから……ヤッてる時は一番可愛いけど」

 その言葉は、予想外に優弥の心へと深く突き刺さった。
 ヤッてる時は……一番。
 それならば、千歳にとって普段一番なのは誰なのだろうか?
 昔、よく一緒に帰っていた年上の女?
 この前、噂になっていたクラスメイト?
 それとも、頻繁に差し入れを持ってくる中等部の後輩?
 考えれば考えるほど、心当たりが多過ぎる。

「どうした? 深海」

 いつの間にか動きを止めていた千歳に、いきなり頭を撫でられた。

「え……」
「泣いてるから。身体、辛い?」

 千歳に言われて初めて自分が泣いていることに優弥は気づいた。
 優弥の意思に反して、涙は止まることなく溢れてくる。

「平気だ。気にしないで動けよ」
「でも……んっ!」

 躊躇っている千歳に強引にキスをして、優弥は続きを促す。

「いいから。激しく……抱けよ」
(余計なことを何も考えないですむように……)

 優弥の態度に千歳は諦めたのか、ため息を吐くと言った。

「泣くほど辛かったら、ちゃんと言えよ」

 そう言って、千歳は優弥の要望通り、いつになく激しく攻め立ててくる。

「あ、あぁ……ふぅ、た、高瀬……んぁっ!」
「深海っ。いいよ、イッて」
「はぁ、ああっ、高瀬ぇ!」
「……っ!」

 千歳の激しい動きで身体はいつも以上に感じていたのに、優弥の気持ちはなんだか千歳を遠くに感じていた。