先生達の秘密の授業

第9話

「雪ちゃん、オキばっかりズルい!」 しばらくすると、春樹がふて腐れたように騒ぎだした。 もう、この頃にはみんな、きっと酔っていたんだと思う……いや、酔っていた。 そんな状態で、俺は自由になる左手で春樹を手招きした。「わかったわかった。ほら、春樹もおいで」
先生達の秘密の授業

第8話

「ところで、オキの話ってなに?」 メインは陽愛くん達が来てから頼むとして、軽いつまみなどを口にしながら飲んでいると、ふと春樹がオキに質問した。確かに今日はオキがきっかけで集まることになったのだ。「みんな揃ってからの方がいい?」「別に二人には改めて説明しますよ」
先生達の秘密の授業

第7話

「どうですか~? 藤堂先生。企画決まった?」 授業を終えて職員室へと戻ってきた春樹に聞くと、春樹が苦笑いで答えた。「これといったものは……まだ」「だよね~」 まあ、予想していた答えに俺もため息を吐いた。 「あげくには龍臣が『俺達がユニット組んでライヴやる!』とか言い出すし……」
先生達の秘密の授業

第6話

「学園祭の企画か~……どうしよう」 先生達が会議室から去っていく姿を見送りながら、俺は呟いた。 今年、初めてクラス担任を受け持った俺は、今までに学園祭の企画提案という経験がない。 だが、近藤先生があれだけ気合をいれているのに、全てを生徒任せというわけにもいかないだろう。
先生達の秘密の授業

第5話

「良かった、間に合った~!」 そう言って机の方に来た春樹は息を乱して、まるで遅刻寸前で教室に駆け込む生徒かのように、まさに急いで来た感じだ。 春樹は大学時代にバンド活動をやっていたらしく、それに熱心になり過ぎて大学を一年留年するという特異な経歴を持つ。
先生達の秘密の授業

第4話

 朝に弱い涼介がテンションは低めだが、そこまで機嫌が悪そうでもなかったので漏らした言葉だったのだが、これが自ら地雷を踏んだことに気づいたのはその後だった。 「だって朝から近藤先生のモーニングコールもらっちゃったら、起きないわけにいかないでしょ」
お知らせ

短編「rainy day」完結しました

短編とも言えないような序章的なお話「rainy day」が全話公開になりました。このお話は雨をテーマにどこか幻想的な雰囲気をイメージして、本編前の序章の感じで数年前に書きました。それから結局、本編は書けていませんが、いつか機会があれば書きたいと思います。
rainy day

降り続ける雨

三人が心から笑い一緒にいられることを幸せと感じていたあの頃に戻れたら ――。 そう願いつつも過ぎた時間は戻らないことを自覚してしまった想いは止められないことを彼らは知っていた。 そんな彼らの本心を覆い隠すように、今日も雨は雷とともに降り続ける。
rainy day

妹から兄へ

私がいなくなってから二年が経つ。 その間に、色々なものが変化していく。 世の中の情勢だったり、人々の心の変化だったり  それは良いものもあれば、悪いものもある。 変わらないものは私だけ……。  でも、お兄様は気づいてる?
先生達の秘密の授業

第3話 ~雪乃視点~

「土方先生、おはようございます!」「おはよう」 職員用の駐車場へと車を停めて、すれ違う生徒達と挨拶を交わしつつ俺、土方雪乃は高等部校舎にある職員室へと向かう。 ここは俺の職場でもある私立誠陵學校。中等部から大学部まで抱え、私立としては独特の教育方針が有名な学校だ。